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2009年9月

2009/09/05

セント・アンナの奇跡(Miracle At St. Anna)

場面は限りなくリアル、物語は限りなく奇跡

Miraclestanna1  事実を元にしたフィクション。第2次世界大戦のヨーロッパ戦線で実在した黒人兵だけの連合軍部隊「バッファローソルジャー」をモチーフにして、ナチスに抵抗するイタリアのパルチザンを匿ったとして地区の住民を虐殺したナチスの蛮行「セント・アンナの大虐殺」、ナチスによるイタリアの橋の爆破「サンタ・トリニータ橋の爆破」、そしてその橋に飾られていた「プリマヴェーラの彫像」の紛失、といった歴史的事実を織り交ぜながら進むストーリーはドキュメンタリータッチではあるが、ヒューマニティ溢れるドラマである。

 場面設定やシーンの細部は限りなくリアリティを持たせているが、映画のプロットは題名通りのミラクル(奇跡)。そのミラクルな出来事の中に、人々の心の中にある差別意識を浮かび上がらせている。

 まず、場面のリアルさについて。
Miraclestanna3  戦闘シーンの迫力は特筆。エンタテーメント性もデフォルメも排除し徹底的にリアルさを追及している。銃弾や爆弾に倒れた時の流血を躊躇なく描写している。特にバッファローソルジャーたちがドイツ軍部隊に待ち伏せされ襲撃を受けた場面、セントアンナ教会での虐殺場面は、倒れた兵士や住民の一人ひとりにカメラを向けている。つまり、戦場は決してカッコいいものではなく、1人また1人血を流し、銃弾に倒れていく地獄絵図なのだ、ということを伝えようとしている。
 また、言語の使用には細部までのこだわりを見せる。ドイツが舞台なのに英語を話すというどこかの映画とは違い、イタリア人にイタリア語を話させ、ドイツ兵士にはドイツ語を話させる。中でもイタリア語へのこだわりは目を見張る。舞台は主にイタリアのトスカーナ地方。スパイク・リー監督のこだわりの凄さは、イタリア語でもトスカーナ地方の方言を話すように俳優たちに演技指導した、と映画のHPで紹介されていたことでもわかるだろう。そんなこだわりが、この映画にリアリティを持たせてくれる。

 奇跡の物語は、ストーリー全編に渡る。同時に謎も残る。なぜ少年が戦闘地域のその場所に現れたのか、その時黒人兵の1人サムと撃ち合いをした男は誰だったのか、トスカーナの村でなぜ突然無線が通じたのか、ヘクターはなぜずっと銃を持ち続けていたのか、そもそも顔を合わせた瞬間その男とすぐに分かるものなのか、、、、、。
 でもそれらは、本題ではないのだろう。

Miraclestanna4  ストーリーの根底を流れているのは、ヒューマニティの問題。それこそが本題なのだ。
 味方にも良くない人間はいる、敵にも良い人間はいる。バッファローソールジャー部隊を本部で指揮をする白人将校は、黒人兵を人間扱いしない差別主義者として描かれる。味方であるはずの連合軍内にいた「良くない」人物の代表格。ファシズムに抵抗するイタリアのパルチザン内でスパイ行為をする男は、言うまでもなく、正義に反する人物であろう。さらに言えば、4人の黒人兵仲間のビショップは、言動や対女性への振る舞いにおいて、決して良い人間とは言いいがたく、模範的ではない。逆に、少年を助けたドイツ軍の兵士は、戦闘の中での人間性を失わなかった人物である。また、主人公ヘクターに対し最後のとどめを刺そうとした部下を制止し、自らの身を守れと短銃を渡したドイツ軍部隊長も、敵内の「良い」人物の一人であろう。人間性は、どこに属しているかが問題ではなく、その人自身の中に宿るのだ、ということを明確に示しているのだ。

Miraclestanna6  印象的な台詞がある。部隊から離れた4人の黒人兵を受け入れたトスカーナの村人たちに対し、兵士のリーダー、スタンプス軍曹は「ここの人たちは、俺たちを黒人としてではなく、人間として接してくれる。アメリカ国内でそんな気持ちになったことはない」。(記憶を頼りに書いているので、表現が違っているかもしれない)
 この台詞こそ、スパイク・リー監督が言わせたかった台詞ではないだろうか。今でもそう思っている人がいるんではないか、と。

 どこまでも、人間としての心を追及した映画であると感じた。

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