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2009/05/07

グラン・トリノ(Gran Torino)

人種間対立と偏見を前にして

Grantorino5  イーストウッド主演にして監督をする作品としては最後、と自身が公言している映画。映画のテーマを絞り、全ての映画内の出来事をテーマに関連させる、イーストウッド節全開の映画と言っていいだろう。
 そのテーマとは、アメリカにおける人種的偏見。アジア系、ヒスパニック、アフリカ系、といった被差別民族どうしの対立、アングロサクソンとひとまとめにしても、その中での細かなルーツの違いをも題材にしている。

Grantorino3_2  アジア系と言っても、多数派の中国系、韓国系ではなく、ラオスの少数民族を取り上げたあたりは、イーストウッド独特のセンスなんだろう。まだアメリカ国内にて1つのコミュニティを形成しているとは言えない少数民族。イーストウッド演じるカトリック系&ポーランド系アメリカ人がまさに眉唾で彼らを見つめるのは、偏見と言うよりもむしろ無知に近いのかもしれない。偏見は、相手のことを知らないこと=無知から始まるものなのだ。知らない、理解できないことに対しては、防御線を張る。それが、「自分たちとは違う」というレッテル貼りになり、相いれないという差別、隔離と繋がる。差別を受けたものは集まり、固まり、独自のコミュニティを形成しはじめる。そして、別のコミュニティとの対立、諍いとなる。ヒスパニック系と対立するアジア系、さらにアフリカ系との対立まで映画では垣間見える。この社会構造が、イーストウッドの問題提起である。
 つまり、この社会構造の根っこは、支配層に属するアングロサクソン系の姿勢にある、ということなのだ。

 ならば、その社会構造をどう解決するのか。
Grantorino1  それは、一人ひとりの心が変わること。そのきっかけは、ほんのちょっとの交流だけなのだ、ということ。
 偏見の塊イーストウッド演じる主人公ウオルトが変わるきっかけは、自分の庭に入ってきた悪党を追っ払おうとしたことが、隣家のアジア系家族を助けたことに、はからずしもなったという偶然。ほんのちょっとずつの交流から、彼が徐々に偏見を取り除いていく。朝鮮戦争での忘れられない過去をずっと引きずっていたウオルトが、罪の贖罪をどうとるのか、と言う点も絡めながらストーリーは進む。このあたりの展開は、イーストウッドならでは、綿密な描写が続く。

Grantorino4 そして、贖罪とアジア系の若者タオを救う最後の手段のエンディングへ。
 人を殺したこと、一時も忘れたことはない、というウオルトの台詞が全てであろう。決して殺してはいけない、そのヒューマニズム溢れた行動に涙が止まらない。牧師には決してその心情を語らなかったのは、弱音を見せたくない彼の美学だったのかもしれない。

Grantorino3  やはり彼の作品らしく、エンディングには、少しの異論が出ているようだ。曰く、いわゆるアングロサクソンに属する主人公がとる手段としては、必ずしも理に適った、まっとうな方法ではないということ。それは、今まで決して後味の良い作品ばかり残してきたわけではないイーストウッド独自の世界観、美学がある。理に適う、のではなく、あくまで主人公の内的要因(心情)を貫き通すことを優先したからなのだろう。
 ただ、それに続く、名車グラントリノの行く末は、イーストウッド作品にしては至極まっとうな結末であった。前作「チェンジリング」と同様、希望を残す幕切れとでも言えようか。湖の畔を走り抜けるグラントリノ、その通り抜けた道をずっと映し出す映像に余韻を感じながら、映画間を去った人も多いのではないか。予測された結末は、ある意味感動を深く心に残すものなのだ。イーストウッドも自身最後主演の映画で、こういう選択をしたのは、人間味があってとてもいい。

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 最後のシーンで流れる歌「グラン・トリノ」の訳詞をご覧になりたい方は、下記のサイトで。

洋楽訳詞ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/hotel_zihuatanejo/28010844.html

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