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2009/05/23

つぐない(Atonement)

こういう、罪の償い方があるのか、と感動

Atonement  atonement、その語ズバリ「つぐない」と訳された邦題のこの映画。贖罪(しょくざい)、すなわち、罪を償うこと。
 誰がどんな罪を犯したのか。それは、映画を見る前からはっきりしている。主人公の少女ブライオニー(シアーシャ・ローナン)。姉セシリア(キーラ・ナイトレイ)と、2人の家に使用人として働く男ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)の恋を、1つの嘘によって引き裂いたのが、罪。
 ならば、あとの興味は、なぜ、彼女は罪を犯したのか、そして何より、その罪をどのように償うのか、がこの映画の見どころとなる。テーマはそこにある。

 その、償うための行動方法は、私たちの予想を覆す程のもの。それが明らかになるのは、映画のラスト、作家となり年老いてペンをおくことにしたブライオニー(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)の告白。「正直に話すことが真実。この映画こそが私の罪の償いである。」と彼女は語る。この場合の真実とは、実際に起こったこと、という意味ではない。実際に自分が感じたこと、思ったこと、そして、伝えるべきであったこと、を語る、という意味だ。
Atonement2  その場面まで、見ているものは完全に騙される。そして、その騙され方に、感動する。こういう、罪の償い方があるのか、と。決してハッピーエンドではない、むしろ悲しい結末であるがゆえ、この映画のテーマを際立たせ、感動を与えてくれる。見事だ。

 時間軸をずらし、映画を見ている者に事実を伝えるタイミングをずらす方法。時には、映画のまどろっこしさ、また、難解さを与えるこの手法も、この映画に限ってはブライオニー視点に観客を引き込む効果的な方法となっている。そこに、なぜ彼女は罪を犯したか、が隠されている。
 ブライオニーが目撃した、セシリアとロビーの間に起きる噴水の前での出来事も、ブライオニー視点で最初は紹介される。しかし、事実はしばらくたってから、私たちに明かされる。この間、私たちはブライオニーに心的に同化していく。罪の意識を与えられるようなものだ。お前だって、そう思うだろ、そんな罪を犯してもおかしくないだろ、と意識付けられてしまう。
Atonement1 幼い頃、卑猥なことば、性的な言葉に異様に敏感になる時期があったのは、誰しも経験があるだろう。ブライオニーには、女性器を表すことば(cunt)はあまりに衝撃的であったろう。セクシュアルな場面を目撃する、それも2度も目撃したのも衝撃を越え、嘘をつくと言う罪を犯すのも頷けよう。それゆえ、2度目の目撃場面(いとこが襲われた場面)の事実が後で明かされた時、きっとその時は事実を本人自身も気付いていなかったのだろう、と思える。嘘をついた、というより、そう思い込んだ、思いたかった、というのではないだろうか。
 映画の最後で、ブライオニーとロビーの、庭の池でのエピソードが紹介される。このエピソードがもし、前半に挿入されていたら、私たちの受ける印象はかなり変わるだろう。ブライオニーの抱いた淡い恋心がよく現れたこの場面。なぜ、彼女がロビーからセシリアに託された手紙を開けてしまうのか、その理由がはっきりする。何となく分かっていたことが、最後にはっきりする。おぼろげに感じていたことが、明確になって映画のラストを迎えるのは、たとえ悲しい結末であろうとも、観賞後感はよくなるものだ。

 また、この映画の特徴は、台詞のない映像の時の、効果音の使い方だろう。
 タイプライターが、パチパチと音を立てる。主人公の少女ブライオニーが、足早にパタパタと音をたてて歩く。この2つの音が映画スタートから妙に印象的だ。ブライオニーとタイプライターと足音、これは、その後も何度も効果的に現れる。それは、早とちりに、一方的に物事を思い込んでしまう、というブライオニーの性格を表している。
Atonement3  ブライオニーが、セシリアとロビーの間に起きる噴水の前での出来事を、2階の窓から眺める場面。台詞は一切ない。ただ、ハチが羽根を震わす音、窓にトントンと当たる音だけが、響く。

 なぜ、と、どのように。罪の理由とその償い方を、台詞だけでなく、映像や音も含めてこれほどまでに巧みに演出したこの作品、名作の1つとして語られるに値するものだと、私は思う。

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» mini review 09355「つぐない」★★★★★★★★☆☆ [サーカスな日々]
ブッカー賞作家イアン・マキューアンのベストセラー小説を、『プライドと偏見』のジョー・ライト監督が映画化。幼く多感な少女のうそによって引き裂かれた男女が運命の波に翻弄(ほんろう)される姿と、うそをついた罪の重さを背負って生きる少女の姿が描かれる。運命に翻弄(ほんろう)される男女を演じるのはキーラ・ナイトレイと『ラストキング・オブ・スコットランド』のジェームズ・マカヴォイ。映像化は困難と言われた複雑な物語を緻密(ちみつ)な構成でスクリーンに焼きつけた監督の手腕に注目。[もっと詳しく] 「アラベラの試... [続きを読む]

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