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2008/11/30

ボーダータウン 報道されない殺人者(Bordertown)

グローバル化がもたらすもの

331103_01_02_02  世間に知られていない事実を、ドキュメンタリーではなく、フィクションのストーリーで社会に訴えるタイプの映画。ドキュメンタリーでも原作本があるわけでもなく、実在の登場人物を使ってるのでもない。となると、かなり無理のある展開になるのか、と思っていたら、そうではなかった。プロットもよく練られ、登場人物の心理描写も巧みであった。そして何よりも、この事件が起こる問題点を鮮明に浮かび上がらせている。映画製作者の良心と意気込みに感服した。

 場所はアメリカとの国境に位置するメキシコの町ホアレス。その町で10年以上にわたって実際に起こっていて、400人以上の被害者がいる婦女暴行連続殺人事件がモチーフ。

 まず、メキシコ出身のアメリカ女性記者(ジェニファー・ロペス)という主人公の設定。メキシコ出身を隠している(というか、隠したいと思っている)彼女が、仕事のキャリアをつけるために引き受けた取材だったが、事件の真相に触れるうちに、徐々に自分のアイデンティティに目覚めていく。その演出、またジェニファーの演技も、その心境の変化を上手く表現していたのではないか。主人公の人物設定がこの映画にピッタリとはまっていると感じた。
331103_01_01_02 特に、髪の色に関しての演出に唸った。黒い髪をブロンドに染めていた彼女が、メキシコ人工員として工場に潜入するために黒い髪に戻し、その潜入取材中に犯人に襲われるも逃げ切った後で、もう一度ブロンドに染めようとして、思いとどまる場面がある。過去の自分と決別しようとする時、髪を切る、髪を染める、ということはよくあるだろう。しかし、黒い髪はラティーノの象徴。黒髪に戻すことで、メキシカンとしての自我を取り戻す彼女がそこにいた。そう、髪の色、目の色、肌の色、これらは全て自分の生まれながらのもの、自己のアイデンティティに繋がるものなのだ。それまでは、どこか仕事上という雰囲気がなくもなかった彼女の行動振りが、このあたりから信念からの行動へと変貌していく。自身も被害者になる寸前だった彼女が、事件の被害者と自分をオーバーラップしてくのは自然な流れだが、髪の色を利用して、その心境の転換を際立たせたのは見事だった。

 地元の反政府系新聞社の編集長(アントニオ・バンデラス)との関係は、映画の中ではほとんど語られないが、かつては恋仲であったことは表情やちょっとした会話の中から容易に推測できる。これについては、本筋では大きな意味を持たないので、あまり深入りせずに正解だろう。最初は、彼女の上昇志向に対して露骨な嫌悪を示した彼だが、彼女の心境変化を見るにつれ、最大の協力をするという流れも自然である。
331103_01_03_02  そして、何より、被害から奇跡的に生還した少女(マヤ・サパタ)の表情が驚愕である。フラッシュバックで何度も自分が襲われる悪夢にうなされ、不安と恐怖、そして加害者への憎悪感。これらが入り交じる感情というのは表現は難しいだろうが、その演技は見事というほかない。実際に起こっているこの事件で、何より救われなければならないのは彼女を始めとした女の子達なのだだ、ということを強く印象づけてくれた。

 この映画において鮮明となった問題点に触れておかなければならない。それは、警察と企業トップ、政府といった権力者たちの癒着と腐敗、なのだろうが、私はそれに留まるとは思っていない。
 今、世間では「グローバル化」と言われている。これがくせ者なのだ。グローバル化とは何か。それは、モノの製造や流通などの経済の仕組みが国境を越えているということ。すでに、全て日本製の電化製品(や自動車製品、化学製品)はなきに等しい。アメリカも同様。部品のどこかは中国製であり、東南アジア製、メキシコ製、中南米製であり、全て海外製であり、ブランドだけが日本・アメリカであるのだ。メキシコの町ホアレスは、その生産拠点である。そしてその製品が、自由貿易の名のもと、世界各地に流れる。

 では、そのグローバル化によって一番の恩恵を受けているのは誰なのか。仕事のない国に工場を建てることは、一種の雇用創生と思うかもしれないが、低賃金で最悪な労働条件の中で働く東南アジアや中南米の国の人々に乗っかって、安い製品を手にするのは先進国に住む私たちなのだ。そして、多くの利益を生むのはグローバル化によって多国籍化した企業だ。

 この映画は、企業のグローバル化による貧富の差が、さまざまなひずみを生み出していることへの警鐘でもある、と私は感じた。
 ならば、私たちはどうすればいいのか。ひたすら利益のみを追求するのではなく、勝ち組になることを目標にするのではなく、皆が共存できる社会を構築する時ではないだろうか。できることは、まず自分たちの足下からでいい。景気不安になるとすぐに、期間労働者や派遣工をクビにする社会(企業)体質を改善させる時ではないか。

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