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映画タイトル別一覧

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2008年10月

2008/10/25

ダージリン急行(The Darjeeling Limited)

3兄弟が横一列に並ぶカットを楽しむ

Darjeelingltd1  父の死後、疎遠になった兄弟が、昔の絆を取り戻すためにインド旅行をする、というロードムービー風映画。監督がウェス・アンダーソンなので、一筋縄ではいかないと思って見てみたら、やはりその通り。

 やたら2人の弟を仕切ろうとする長兄フランシス(オーウェン・ウィルソン)、神経質だが小狡そうな次男ピーター(エイドリアン・ブロディ)、頑固な芸術家気質の末弟ジャック(ジェイソン・シュワルツマン)、三者三様の風貌。再会した瞬間から、確かに仲が悪そうな雰囲気の3兄弟。どうでもいいような旅のエピソードをはさみながら、何となくストーリーが進んでいく。なぜインド旅行なのか、良く分からないまま。やたらアップされるイニシャル入りのカバンの意味も分からない。フランシスとその秘書(助手?)の会話が何かストーリーに裏があると感じさせはする。でも、おぼろげでもストーリーが見えてこない。

 中盤にさしかかる頃、失踪した(というか、父と離婚した)母親の話が登場し、少し話しが見え始める。
Darjeelingltd3  そして、列車から放り出された辺りから、ストーリーは大きく動く。小さな村での出来事と、父親の葬儀でのエピソードが重なり合い、おぼろげながらも全体像が見え、兄弟の絆が戻り始める兆しが見えてくる。古典的なストーリー展開で言えば、起承転結の「転」の部分がまさにここなのだろう。ここで、それまで分からなかったものがほとんど解明されていく。
 ところが、「結」となる母親に関するエピソードは、普通の映画なら最大の見どころになるのだろうが、そうはならない。通常の映画のエンディングらしさは微塵もない。見事に期待を外してくれる。が、それが尻切れトンボになるわけでもなく、不条理でもなく、後味は決して悪くないから不思議だ。

Darjeelingltd2 私が思うに、この映画の最大の見どころは、3人が横一列に並ぶカットではないだろうか。その構図で画面に映ると、個性溢れる3人が兄弟っぽく見えるから不思議だ。そして、列車の中で再会した時や、最初の停車地の町中で並ぶ姿は、仲悪そうな雰囲気がありありとしていたのが、ストーリーが進むにつれて3人の間に柔らかな空気を感じられるようになってくる。特に、映画の後半、村から去る時のバスに乗り込む場面でのスリーショットは、仲が戻ってきた雰囲気が漂っていた。空港で走る姿、バイク疾走シーン、ラストでの電車に駆け乗る様子、そして電車の中のショットは絆が戻ったとみて間違いない。もちろん、言葉では現れてはいない。そんなベタな演出ではない。そこが、一筋縄ではいかないところでもある。そして、後味が悪くないのも、その3人の並ぶカットの多用による効果なのだろう。こだわり続け、多用し続けるスリーショットに、この映画の面白さを感じたのだ。

 映画の冒頭に登場したビル・マーレイが最後にまたちょっと登場し、クスッと笑えた。3人を列車から追い出したヒゲの車掌さんも、スパイスが利いた演技だ。毒蛇もちゃんといて、これまた小笑い。いいなあ、こういう演出。

 最後に、「ダージリン急行」って、本当にあるのかな、と調べたけど、仮想の列車みたいだ。ただ、インドは列車大国とも言われているので、こんな雰囲気の列車はありそうな気がするが、どうなんだろう。庶民感と高級感が同居する列車って、いかにもアジアっぽくていいなあ。

2008/10/16

ゲット・スマート(Get Smart)

アメリカ風コメディとイギリス風コメディの違い

Getsmart  コメディに、アメリカ風とイギリス風があるとするなら、どちらを好みますか。イギリス風とは、皮肉たっぷり、ブラックジョークたっぷりの「モンティ・パイソン」が代表格。アメリカ風とは、単純な小ネタのオンパレード、ツッコミどころ満載の「それゆけ、スマート」タイプ。好みの違いで、この映画の評価は分かれるのでしょう。ちなみに私はイギリス風好きです。
 ということで、この映画、メル・ブルック製作のTVシリーズ「それゆけ、スマート」のリメイク・映画版には、私は今一つ満足できませんでした。007シリーズのパロディが随所にあり、たくさん登場する笑いの小ネタに、大笑いはしなくともクスクスっと笑え、その都度ツッコミたくなりますが、それも今一つパッと印象に残りません。

 試しにツッコミを入れてみます。(   )がそうです。
Getsmart2 電話ボックス出入り口(そんな所にあっても意味ないだろ!)、消火用ホースを使った武器(どこ飛ぶかわからんだろ!)、電波シールド(漏れないというより、聞こえないだろ!)、 ジャックナイフについた火炎放射器(一緒にする意味が分からん!)、飛行機についた脱出用グッズ(って、そこで脱出する意味あんの!)、前を見たまま後ろを見る(できるわけないの!)。
 そんな箇所がそれこそ5分に1回は登場します。愉快です。ただ、たくさんある割には、「ツボにはまる」ような笑いには至らないのです。もちろん、マックス・スマート役のスティーブ・カレルの真面目な表情と、そのドジさ加減には笑えます。適役です。でも、結局は自分でかなりの部分はフォローしてしまうので、大事には至りません。そこが私には「笑いに徹していない」と映ってしまうのです。

 ローワン・アトキンソンの「ジョニー・イングリッシュ」と言う映画がありました。設定はそっくりです。ただ、笑いには徹底しています。ミスはとことんミスし続けます。致命的なミスもします。ミスしたことを本人が気付かず、一つの映像をはさむことで観客に伝えます。そこが、毒です。本人は知らないのです。または、部下が上手にその場を収めます。だから、心底笑える(もしくは馬鹿にできる)のです。でも、皮肉がありすぎて笑えない人もいるでしょう。

 そこが、アメリカ風とイギリス風の違いなのだと思います。
 日本のコメディやギャグは、現代はアメリカ風に近いでしょう。単純に「笑う」ネタが多い、と言う点で。でも、落語や昔ながらのしゃべくり漫才は、皮肉やブラックジョークも入ったイギリス風に近いと思うのです。

 今度は別の視点からこの映画を考えてみます。
 コメディなら、ストーリーなど、評価ポイントの対象にはなりませんね。無理やり事件が起き、お決まりの潜入捜査に、危機一髪絶体絶命、裏切りにどんでん返し、最後は予定調和とご都合主義のハッピーエンド、で決まり。それでいいんです。それで楽しめるのですから。だから、ストーリーに期待はしません。イギリス風でも、アメリカ風でも同じ。
Getsmart4 むしろ、ストーリー構成の前提となる「場面設定」を楽しみたいと思うのです。残念ながら、核兵器を製造してテロ国家に売る、大統領を爆殺する、あまりにもありふれた設定です。現代の国際問題を入れればいい、というものではありません。コメディなら、もっと荒唐無稽な設定を望みます。「ジョニー・イングリッシュ」は、フランス人がイギリスの王になる、という訳の分からない設定です。あり得ないからこそ楽しめて笑えるのです。現実に起こりそうな設定では笑えません。以前の「それいけ、スマート」映画版は、爆発したら着ている服が脱げてしまう「ヌード爆弾」なるものが登場。あり得ない設定で、おフザケ度高すぎですが、だからこそ痛快です。その面でも、ちょっと物足りなさを感じました。

Getsmart3  かなり批判的にレビューしましたが、評価したい点はあります。スパイ映画のパロディ度。この映画は、畏敬の念を込めたオマージュに近いのかなと思います。例えば、マックスとエージェント99(アン・ハサウエイ)が乗るYarmy International Airline。Yarmyとは、TV版のマックス役のドン・アダムスの本名の苗字だそうです。他にも、007を意識したカットがたくさん出てきますが、それはみんなで007という名作を思い出す楽しさでもあります。愛情表現の一つだと思うのです。これがモンティパイソンだったら、相手が怒ってしまう程コケにするでしょう。もちろん、イギリス風コメディはそんなことお構いなしですが。

 最後に、アン・ハサウエイのパーティでのドレス姿、とても妖艶で美しくて、歴代のボンドガール以上だと思いました。私は「プラダを着た悪魔」以来のファンですが、あの姿に心ときめかない男性はいないでしょう。

2008/10/13

私がクマにキレた理由(The Nanny Diaries)

クマにキレる前のストーリーで十分楽しめる

Thenannydiaries  期待せずに観に行った映画が予想外に面白かった時ほど、嬉しい気分になれるのはない。今回はまさにそうだった。
 ストーリーは予告編と邦画タイトルでほぼ予想がつく。「キレた」なんてタイトルに入っていれば、最後に怒りをぶちまけると言う展開は目に見えている。「ブリジット・ジョーンズの日記」や「プラダを着た悪魔」とどう違うかな、今が旬のスカーレット・ヨハンソンとアリシア・キーズの演技でも観に行くか、と言う軽い気持ちだったが、嬉しい誤算だった。

 アメリカでベストセラーになった「ティファニーで子育てを」が原作の本作品。セレブの生活を、子守り(Nanny)の目で描いたと言う点が特徴。マンハッタン島でも、ニューヨーク市内でもなく、郊外のニュージャージーに住む大学出たての主人公アニー(スカーレット・ヨハンソン)。女で一つで育てた母親が望む金融界への就職を目指すが、彼女が大学で学んだのは「人類学」。自然史博物館がお気に入りの場所。
 そんな彼女が、「自分」を見つけるためにセレブの生活に「侵入」する。偶然の産物もあったにしろ、このストーリーの展開はテンポよく、一気に映画に惹き込まれる。登場人物の紹介は、アニーのモノローグが大いのがやや気になるが、主人公、友人(アリシア・キーズ)、母親、雇い主セレブのミセスX(ローラ・リニー)とミスターXと5歳の息子グレイヤー、他のナニーたち、「ハーバードのイケ面(Harvard Hottie)」、を一気に紹介してくれるので、ストーリーにスッと入っていける。これは、アニーが人類学専攻、という設定が効いている。彼女のモノローグは感情を込めない、学術的・分析的・第三者的な解説なのだ。感情を説明するモノローグでは俳優が演じる必要がなくなってしまうが、これならモノローグが効果的だ。

Thenannydiaries3 X夫妻の自分勝手な振るまいは「ブリジットジョーンズの日記」の最初の恋人、「プラダを着た悪魔」の編集長を思い起こさせるが、セレブの生活を皮肉たっぷりに紹介する点が異なる。庶民とはかけ離れた暮らしぶりはもちろん、庶民なら普通に楽しめるものまで制限されたグレイヤーの様子、子どもへの愛情が完全に見当違いになる様子、セレブ対象の○○講習会のうさんくささ、慈善活動に妙に熱心、といった出来事が描かれる。そう、そこで紹介されるセレブ生活は全く羨ましくないのだ。皮肉、と書いたが、ペーソス(悲哀)と言った方がいいのかもしれない。男はお金とビジネス、女は飾られただけの上部だけの生活。本当の意味で人生を謳歌しているとは言えないセレブの生活、なのだ。そういう点で、女性だけではなく、庶民はみんな完全にアニーに感情移入できるのだ。「ブリジット」と「プラダ」とは明らかに違うのはこの点であり、この映画の一番の面白さでもあるのだ。
 という理由(わけ)で、この映画の面白さはエンディングまでの展開にあり、エンディングではない、と思う。クマにキレる前のストーリーで十分楽しめる映画だ。

 

この映画、原作に忠実に映画化しているかと思ったら、そうではないらしい。アニーの設定は、原作とかなり異なっているそうだ。原作では、アニーはマンハッタン内の女子高卒でニューヨーク大学の学生、専攻も児童教育学。X家に居候しているのではなく、アパートに住んでいる。ベビーシッターの経験もあった。父は大学教授、母は弁護士、と知識層に属している。セレブとは言わないまでも、それなりに裕福な家庭に育っている。原作を変えると面白さが失われる場合が多い。しかし今回は上記のように、映画の特徴をハッキリさせ、メッセージを印象付けるのには、映画版の設定にして正解だった。

Thenannydiaries2  誰もが言う、邦画のタイトルへの苦情を最後に一言。「クマにキレた」と付けたせいで、エンディングのオチは完全に分かってしまう。それは、映画の内容を教え過ぎではないだろうか。ティディベアに隠しカメラ(nannycam)も、観客にはバレている。禁じ手でしょう。

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