フォト

映画タイトル別一覧

  • 映画タイトル別一覧
    外部HPに、当ブログの映画レビューの記事「映画タイトル別一覧」を作りました。

最近のトラックバック

« 帰らない日々(Reservation Road) | トップページ | ホリディ(Holiday) »

2008/08/12

Once ダブリンの街角で(Once)

詳細が語られなくても、歌で感じられる

Once  日本で公開された時、アメリカでの上映のことで話題になった映画だったので、ぜひ見たいと思っていたのだが、この手の単館系の映画は地方都市に住んでいると見る機会が極端に少ない。DVDで発売されるのを待って(レンタルで)見た。

 とにかく、音楽が素晴らしい、の一言に尽きる。曲の歌詞がストーリーに直結している。ただ、歌が台詞代わりのストーリーになっているのではないので、ミュージカル映画風ではない。歌が主人公2人の気持ちとなっているのだ。主人公を演じる2人(グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァ)がミュージシャンであり、実際に自分たちで歌を作り演奏しているので、歌心が直に伝わってくるのだろう。2人がはじめてセッションをする場面がある。そこは楽器店。Falling Slowlyという曲を演奏する。サビの部分で完全にノックアウトをくらった。この場面一つで、この映画の価値はここにある、と感じた。

 つまり、 現実にありそうな設定でありながら、最後までファンタジーを雰囲気を残す。決して細かいことを語らない。二人の心の中は、すべて歌で表現する。

 なぜ男がそこに立って歌っているのか、なぜそこに女が立っているのか、なぜ二人はそれぞれの別れを経験したのか。そういった疑問は何一つ解決されない。だからストーリーには不満を感じざるを得ない。でも、この映画において、その種明かしは必要なのか。私の答えは「ノー」である。この映画はプロットが重要なサスペンスでも、心理描写が不可欠なドラマでも、ましてや観客を楽しませようというエンターテイメントでもないのだから。

 主人公2人の歌う曲の歌詞を聞けば、男がかつての恋人の寄せる思いも、女に感じ始める恋心もわかる。女が離れて暮らす夫への気持ちも(2曲だけだが)、伝わってくる。いや、分かる・伝わってくる、というより、こんな気持ちなんだろう、と想像力をかき立てられる、と言った方が正しいかもしれない。この映画には、それで十分じゃないだろうか。

 先に述べた曲(Falling Slowly)の他に、バンドで演奏するWhen Your Minds Made Upと言う曲が印象深い。5拍子のリズムで流れるような美しいメロディができるのか、と感心。「お前が決めたのなら、その道を進め」。別れた彼女に言っているのと同時に、自分に言い聞かせている雰囲気がでている。と同時に、主人公の女へのメッセージとも取れる。

 最後まで見終わって、エンドロールでハタと気付いた。主人公はguyとgirl。そうか、二人とも名前で呼び合っていなかったんだと。他もほとんど名前が出てこない。でも見ている最中は全く気にならなかった。名前が気にならない映画、それもいいアイデアだ。
 また、ハリウッド的ではないが、清々しいエンディングには好感が持てた。 また、単なるハッピーエンドや不幸な結末、はたまたご都合主義の大どんでん返しではなく、希望が持てて、その先のストーリーを想像させようというエンディングが、私は好きだ。とりわけ、アイルランド、ストリートミュージシャン、チェコ移民、貧困層という状況は、希望や夢を渇望させるのには適した設定なのかもしれない。

 楽器店のオヤジ、男の父親、女の母親、銀行の融資係りの男、集まったバンドメンバー、録音に立ち合った男、彼らに関わっていく人たちが2人に感情移入していくのは、音楽の持つ力なのだろうか。音楽好きの私は、そうであると信じたい。


Falling Slowlyの訳詞はこちらのブログに掲載。
http://blogs.yahoo.co.jp/hotel_zihuatanejo/16813621.html

When Your Mind's Made Upの訳詞はこちら。
http://blogs.yahoo.co.jp/hotel_zihuatanejo/25365836.html

« 帰らない日々(Reservation Road) | トップページ | ホリディ(Holiday) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/510100/42149227

この記事へのトラックバック一覧です: Once ダブリンの街角で(Once):

» フォーリング・スローリー/グレン・ハンサード [洋楽訳詞ブログ The Cinema Show]
= Falling Slowly / Glen Hansard = == ゆっくりと落ちて行く == {{{No.72}}}  映画「Once ダブリンの街角で」を見た。アイルランドの首都ダブリンの街角で出会った男と女。音楽を通じて魅かれ合いながらも、それぞれ別の人生を歩み出す、というストーリー。主人公の2人は本物のミュージシャン、そして彼らが映画の中で歌う曲がすべて、彼らの心情を歌っている、という映画。一見ミュージカルのようだが、ちょっと違う。ミュージカルというより、1枚のアルバムの..... [続きを読む]

» ホエン・ユア・マインズ・メイド・アップ/グレン・ハンサード ft. マルケタ・イルグロヴァ [洋楽訳詞ブログ The Cinema Show]
= When Your Minds Made Up / Glen Hansard featuring Marketa Irglova = == お前の心が決めたのなら == {{{No.138}}}  映画「Once ダブリンの街角で」(2006年公開)の挿入曲。この映画については、Falling Slowlyの所で述べたが、主人公2人が映画の中で歌う曲がすべて、ストーリーの心情を表す、という映画。主人公の男(グレン・ハンサード)と女(マルケタ・イルグロヴァ)は共にミュージシャ..... [続きを読む]

« 帰らない日々(Reservation Road) | トップページ | ホリディ(Holiday) »

2015年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

洋楽に関するおすすめブログ

おすすめ映画レビュー

無料ブログはココログ