グリーン・マイル(The Green Mile)
スティーブン・キングの人間ドラマは見ごたえがある
「ショーシャンクの空に」のスティーブン・キング原作、フランク・タラボン監督の作品。超自然的な要素やミステリー風味を加えての、3時間を越える人間ドラマとなっている。一人の老人が昔を語る、と言う形で始まる、最後も昔話から現在に戻ってくるというストーリー構成は、昔からよくある手法だ。この手の作品は、現代に戻った後に、ちょっとしたエピソードが加わったり、どんでん返しがあったり、感動的なエンディングを迎えたり、となることが多い。この作品も、同様な演出をしている。(詳細はネタばれになるので、控えます)

さて、この作品、人間ドラマでは不可欠の、詳細な人物描写がなされているか、というと、実はそうでもないのだ。幼女を殺害したと言う罪で死刑宣告を受け刑務所に入所してきた巨体の黒人男性コーフィ。その男がもつ、病気を治すと言う超自然な力が、少しづつ明らかになる。ところが、彼の性格も生い立ちも全く明かされることはないのだ。小さきもの、弱きものに絶対的な愛を注ぐ一方、力を誇示するもの、悪しきものには容赦のない仕打ちをする、という面だけが徐々に分かってくる。では、なぜ幼女殺人の罪で入所することになったのか、ひょっとしたらえん罪ではないのか、という疑問を最後までずっと観客に考えさせ続ける。それとも、彼は人間を越えた存在(ひょっとすると神ではなかったか)とまで思わせる程の深みがある。超自然的現象を元に、ミステリー風演出(脚本)を加えた作りは見事だ。
この映画の主人公は、刑務所の死刑執行人役のトム・ハンクスなのだが、彼はむしろ観客側の代表者のような存在だ。つまり、先に述べた観客の視点そのままの存在なのだ。映画が進むにつれ、彼にどんどん感情移入していく。私たちは、彼の視点で映画を見ている自分に気付くのだ。
では、この映画のテーマは何か。私は、善意を持った人間として生きることの苦悩、ではないだろうか。コーフィが、後半で「いろんな場所を放浪した。もう疲れた。」と語る場面がある。生き続けると言うことは、人の死を見届けることでもある。人の痛みが分かる、善意を持った人間は、不条理な(人の)死を目の当たりにすると、自分の力ではどうすることも出来ない無力感や、その時の苦悩に直面する。生き続けることは、苦しみでもあるのだ。「ショーシャンク」という刑務所で、生きることへの渇望を表現したキングとタラボンは、「グリーンマイル」刑務所では、生きることの苦しみを表したのだ。見事と言う他に、言葉が見つからない。
ただ、個人的には、生きることの苦しさは日常生活で十分に感じていることでもあるので、生への渇望を表した「ショーシャンクの空に」の方が好みではある。本当に個人的な趣向なのだが。


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