陽のあたる教室(Mr.Holland's Opus)
普通の教師の、普通の人生。でもそこには人の成長がある。
ホランド先生は、「フリーダム・ライターズ」のような情熱的な先生でもないし、「今を生きる」「ごくせん」や「GTO」のような破天荒さもなければ、「金八先生」のような正義感溢れる人徳者でもない。むしろ、教師にでもなるか、そうすれば自分の時間を有意義に使える、と思っていた、どこにでもいるごく「普通」の青年教師だった。自分の時間を使って、専門である音楽の勉強と作曲をしよう、教師は一時の仕事と考える、そんな「いい加減な」教師だった。ところが、楽器演奏の未熟な生徒達に嘆きつつ、一人の生徒の楽器の指導をすることで、教師という職業のだいご味を知るようになるのだ。さらに、距離を置いていた聴覚障害を持つ息子と、真に向き合うようになる。そして定年を迎えた時、息子と妻の見ている前で、かつての教え子たちで構成されたオーケストラの指揮を執る。教え子に囲まれて定年退職を迎えることほど、教師冥利に尽きることはないだろう。その演奏曲こそが、ホランド先生の作品=Mr.Holland's Opusなのだ。
この映画の素晴らしさは、ごく普通の人が、目の前のことに精一杯取り組み、時には間違いや失敗を犯しながらも、着実に成長していく姿が描かれている点ではないだろうか。取り立ててすごいことをしたわけではなく、教師として当たり前のことを、親として当たり前のことをしただけなのに、感動的な映画となっているのは、この映画が描く世界が本当にリアルだからであろう。自分の時間を大切にしたがる気持ちも、障害を持った子どもと面と向き合えない心の弱さも、やっかいな生徒の面倒をみるのを嫌がる姿勢も、浮気心も、みんなリアルだ。その時その時、真剣に悩み、精一杯努力し、問題を解決していく。そして、そんな中で人は成長していく。
ごく普通の人の、ごく普通の生き方でも十分ドラマなのである。そして、ごく普通の人が、自分の出来ることを精一杯することで、この世の中はよくなるのだ、と私は信じている。世の中にヒーローは沢山いるのだ。
最後に一言。ホランド先生(リチャード・ドレイファス)が手話で歌う「ビューティフル・ボーイ」、この1曲だけでも、音楽点は満点。


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