8マイル (8 Mile)
ラップの本質がこの映画の中にある

白人ラッパー、エミネム主演の自伝的映画。デトロイトの通称8マイル・ロードは、貧民層の住む地域と、富裕層の住む地域の境目。その貧民層で生まれ育ったエミネム演じるジミー(通称ラビット)が、黒人ラッパーに挑戦していく物語。
とにかく、貧困の度合いに驚く。アメリカにおける貧富の差は、日本の比ではない。黒人やヒスパニックなどの移民に貧困層が多いのだが、ラビットのようにpoor whiteと呼ばれる白人貧困層も、出口のない暗闇に放り込まれたようなもの。ラビットがそんな中でも夢を無くさず、現実にもしっかりと向き合い、懸命に生きている姿に、エールを送りたい気分になる。働かない母、幼い妹を思う気持ちも痛い程よくわかる。エンディングもアメリカンドリーム達成でハッピーエンド、という単純なものでもなく、日常生活に戻っていく所にリアリティを感じることができてイイ。ただ、母親の恋愛話や、新旧ガールフレンドとのストーリーはやや軽薄な印象でしかなく、物足りなさを感じる。
ひとつの発言に1回はf**kという猥語が出てくるような、汚いことばのオンパレードなのだが、何でもかんでもラップにして、ライム(韻)を踏ませようとする言葉の操りには脱帽だ。映画でラップを語る場面で、何度もskill(スキル:技能)と言うことばがでてくる。韻を踏むラップの歌詞(リリック)を作って歌う技能のことをスキルと呼んでいる。言葉は汚いが、言葉の音に敏感である、というのは一種の文学的な雰囲気を醸し出していると感じる。現状に対する不満と怒りを表し、相手に対して攻撃的なリリック。そんなラップの魅力を十二分に見せてくれる映画だ。
エミネムは実際、地元で懇意にしていたラッパーと、自分が有名になった後にアルバムを共同製作している。昔の仲間との強い絆を表すエピソードだ。苦楽を共にした仲間は、一生の友なのだ。
ただ、同性愛者への攻撃的で差別的な発言は、自身が差別された、虐げられたことヘの裏返しであるにしろ、戴けない。音楽に魅力は感ずるが、その発言は全て受け入れられるものではない。差別されたものが、また誰かを差別する、のでは、差別は無くならないし、問題の解決にはならないのだ。


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